総合診療科 専攻医募集プログラムのご紹介
京都田辺中央病院 総合診療専門研修プログラムについて
わが国の超高齢社会にあっては一人ひとりの患者様は一つの疾患のみを患っているのではなく、同時に複数の疾患を患い、それぞれの疾患は相互に絡み合い複雑な状況を示していることが多いと考えられます。総合診療科はまさにこうした患者様への先進的な全人的医療の要であります。
当院ではこれからの地域医療に対応すべく、一般社団法人日本専門医機構の総合診療領域専門研修プログラムに則り、2023年4月から研修プログラムを開始いたしました。
病院、診療所などで活躍する高い診断・治療能力を持つ総合診療専門医の養成、専門各科と協働し全人的医療を展開しつつ、自らのキャリアパスの形成や地域医療に携わる実力を身につけていくこと、こうしたことに重点を置き、若い医師はもちろん、経験を積んでこられた先生方のセカンドキャリアとしての総合診療専門医の育成も積極的に行っております。
内科統括部長の西尾先生にお話を伺いました。
総合診療科部長 兼 救急センター センター長
内科統括部長
西尾 学
京都府立医科大学医学博士
プロフィール
- [出身大学]
- 京都府立医科大学(平成4年卒)
- [専門分野]
- 心血管インターベンション/末梢血管インターベンション/循環器全般
- [専門医等]
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日本内科学会認定総合内科専門医、指導医
日本循環器学会認定循環器専門医
日本心血管インターベンション治療学会認定医
日本心臓リハビリテーション学会認定心臓リハビリテーション指導士
日本人間ドック学会認定人間ドック健診専門医
日本医師会認定産業医
- [所属学会]
- 日本内科学会/日本循環器学会/日本心血管インターベンション治療学会/日本心臓リハビリテーション学会/日本人間ドック学会/日本呼吸器学会
自分で作っていく喜び
- 当院での総合診療科の特徴をお聞かせください。
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当院はリアルワールドの地域医療を展開しているため、あらゆる患者さんが来院されます。そのため臓器別の大病院や大学とは異なる、本物の臨床スキルを身につけることができる、という点が大きな特徴です。
そのなかで、自ら積極的に関与し、治療の効果や薬の作用を経験し、その反応を自らの体で感じたり、治療方針を自らの意思で決定するという経験は、症例をただ学ぶだけでは得られないものです。ここでは積極的に診療活動に携わることで日々成長が実感できる研修が得られると思います。
- 治療の判断を下す経験は、どのような場面で得られるのでしょうか?
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自らの知識をもとに診断治療を行うということは、結局自分が決定できる場面でしかトレーニングができないのです。当院では多数の症例に主治医として担当していくなかで、本当に責任を持って治療を行い、自分自身で感じることで初めて真の経験と知識、そして能力を身につけることができると考えております。実際の現場での経験は、医師の成長にとって重要な要素です。
- 専攻医の成長支援について教えてください。
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当院では、上級医が責任を持ちつつも、専攻医の判断を尊重し、診断や治療のプロセスにおいて協力するスタイルを採用しています。時間はかかるかもしれませんが、研修医自身が自らの力で診断や治療に取り組み、総合診療医として成長していくことを目指しています。自己の成長に主体的に取り組むことで、総合診療医としての能力を高めることができると考えています。
総合診療科の醍醐味
- 総合診療科の治療方法について、具体的に教えてください。
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当院の総合診療科では、一つ一つの症例に対して「当事者意識を持って関わる」ことを重視しています。
例えば、救急医療で腰痛の患者さんが来院されたとします。救急での除外診断は総合診療の仕事ですが、それが椎間板ヘルニアであると診断し、整形外科の疾患として紹介するだけでは、総合診療は表層的な診断に過ぎません。当事者意識を持った理想的な総合診療とは、患者さんの心に深く関わり、治療方針や手術、リハビリなどにも関与していくことです。患者さんの気持ちや整形外科の専門治療担当医の推奨する治療を理解し、説明や相談の補助、治療の橋渡し、治療後の全身状態の相談窓口として機能することが、総合診療の得意分野です。
各専門診療科が専門治療を行う価値があるように、総合診療科はそれらの治療の導入や転帰の全体をデザインすることができ、全体を統括することで醍醐味を感じることができるのです。
総合診療研修に理想的な場所
- 総合診療研修についてお話を伺いたいと思います。総合診療医になるためには、どのような総合診療研修が重要だと考えられますか?
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総合診療研修は、総合診療科が他の専門診療科から孤立したり対立したりすることのない環境で行われることが重要です。施設が垣根や心理的ハードルによって総合診療研修を阻害する場合、正常な総合診療の成長が妨げられてしまいます。特に科別の峻別が強く、「これは私の科ではない」「これは他科なので、当科は関係ない」という発想の現場の状況では総合診療的なアプローチが困難になってしまいます。従って、総合診療科は他科との常に良好な、時には気楽なコミュニケーションが常に保たれていることが一番重要であり、当院はそのような現場の構築を常に心がけております。
その一方で、理想的な総合診療研修の場とは、大学病院や大規模病院ではないものの、専門治療も行われていることが望ましいと言えます。総合診療科と各専門診療科の会話が常に行われることで、各専門診療科の気持ちや信念を理解することができ、これが重要であり、このような環境であれば、総合診療科専攻医は患者さん個々の状態に深く関わり、必要な治療のデザインを構築することができるようになります。
京都田辺中央病院の総合診療の伝統
- 京都田辺中央病院について、総合診療の特徴や伝統について教えてください。
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当院は京都市内から30分の場所に位置し、京都府立医科大学からの派遣医師が多く在籍している病院です。専門診療科の専門治療にも力を入れており、ダビンチによるロボット手術や脳神経外科の脳梗塞血管内治療や手術、循環器内科のPCI・アブレーション治療、整形外科手術なども積極的に行っています。その中で地域医療のニーズに応えるため、疾患横断性の患者様の問題に真剣に向き合い、各専門診療科と連携し患者様の満足度を高めることを明確な目的として総合診療を展開しています。
もともと当院では総合内科を立ち上げ、ベテランの循環器内科医が中心となって総合内科診療を開始した歴史的な経緯があります。その後、各専門診療科の状況を熟知し、高いコンサルテーション能力を持つ医師たちによって総合診療が展開されました。
総合診療科と各診療科の垣根がなく、一体化した診療を行うことを目指しています。例えば、前日に入院した患者様の症例については、毎朝8時30分に医局会を開き、各診療科に相談し連絡を取り合って担当診療科を決定しています。このような取り組みにより、各診療科の治療方針や最新の治療トレンドについて理解を深め、連携を図る機会を日々設けています。
- 具体的な症例でも、すぐに専門医に相談できる環境が整っているのでしょうか?
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もちろんです。例えば、腰痛の患者様が椎間板ヘルニアと診断された場合でも、当院では総合診療医がすぐに整形外科専門医に相談し、治療方針や手術方法などを直接教えてもらうことができます。手術後のリハビリテーションの研修も、系列の京都田辺記念病院で受けることができます。さらに、自験例に関しては、その後の在宅時でも外来診療や治療に関わる機会があります。このように全体を見据えた総合診療研修が展開されており、そのメリットを最大限に活かしています。
当院での3年間の総合診療研修を通じて、リアルワールドの様々な疾患に対して的確な診断と治療を行う能力を身に着け、それによって全人的な医療を展開することが可能になり、ひいては患者様の満足度の向上にもつながるのです。
地域医療の全人的医療に必須である総合診療への誘い
- 最後に、地域医療の観点から、具体的な取り組みを教えてください。
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当院では若い医師だけでなく、これまで各専門診療科で研鑽を積んできた医師にも、総合診療への研修の機会を提供しています。地域医療で総合診療を始めたい医師がいつでも必要な研修を受けられるように整備し、研修を充実させていく予定です。地域医療において全人的な診療を展開するためには、総合診療が必須の領域であると考えています。そのため、どの診療科からであっても地域医療に貢献するためには、総合診療は必須の資格になるでしょう。